円形脱毛症

【皮膚科専門医が解説】円形脱毛症の本当の原因と正しい治し方|ストレスだけじゃない?子供の脱毛も解説

  • 「ある日突然、髪にコインほどの大きさの脱毛が…これって何?」
  • 「円形脱毛症はやっぱりストレスが原因なの?」
  • 「子供にもできる治療法はある?このまま治らないのでは…」

もし、あなたがこのような不安や疑問を抱えているなら、この記事がきっとお役に立てるはずです。円形脱毛症は、見た目に直接影響するため、ご本人はもちろん、ご家族にとっても非常につらい症状だと思います。

この記事では、皮膚科専門医の立場から、円形脱毛症の本当の原因、ご自身でできる症状のチェック方法、皮膚科で行う具体的な治療法、そして毎日の生活で気をつけたいセルフケアまで、分かりやすく解説します。

読み終える頃には、ご自身の症状への理解が深まり、次に何をすべきかが明確になっているはずです。

円形脱毛症とは? – まずは正しく知りましょう

円形脱毛症とは、その名の通り、前触れなく円形や楕円形に髪の毛が抜けてしまう病気です。一般的に「10円ハゲ」などと呼ばれますが、1箇所だけとは限らず、多発したり、頭全体の髪や、眉毛、まつ毛、体毛にまで及んだりすることもあります。

多くの方が「円形脱毛症=ストレス」というイメージをお持ちではないでしょうか。確かにストレスは発症のきっかけの一つになり得ますが、それが全ての原因ではありません。最近の研究で最も有力視されているのは**「自己免疫疾患」**という体の内部の仕組みが関係しているという考え方です。本来、体を守るはずの免疫細胞が、何らかの間違いで自分の毛根を攻撃してしまい、髪の毛が抜けてしまうのです。

「うつる病気なのでは?」と心配される方もいらっしゃいますが、円形脱毛症は感染症ではないため、**他人にうつることは絶対にありません。**まずはこの点を正しく理解し、過度に心配しないことが大切です。

なぜ起こるの?考えられる原因

円形脱毛症のはっきりとした原因はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。ここでは、主な原因を「内的要因」と「外的要因」に分けて解説します。

  • 内的要因(体質・遺伝など変えにくいもの)
    • 自己免疫疾患: 最も有力な原因です。免疫システムが毛根を異物と間違えて攻撃してしまいます。
    • アトピー素因: アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎などをお持ちの方や、ご家族にいる方は、円形脱毛症を発症しやすい傾向があると言われています。
    • 遺伝的要因: ご家族に円形脱毛症になった方がいる場合、発症しやすい可能性が指摘されています。
  • 外的要因(生活習慣など変えられるもの)
    • 精神的・身体的ストレス: 過労、睡眠不足、大きな心配事、怪我、手術、出産などが、免疫のバランスを崩す引き金になることがあります。臨床現場では、ご本人が自覚していないうちに溜まった疲れが原因となっているケースもよく見かけます。
    • 感染症: 風邪などのウイルス感染が、免疫システムの誤作動を誘発することがあります。
    • 栄養障害: 特に鉄欠乏性貧血などが、髪の健康に影響を与える可能性があります。

ストレスはあくまで「引き金」の一つであり、根本には自己免疫という体質的な問題が隠れていることが多いのです。

こんな症状はありませんか?セルフチェックリスト

ご自身の症状が円形脱毛症かもしれないと感じたら、以下の項目をチェックしてみてください。

  • 見た目の変化
    • □ 境界がはっきりした円形または楕円形の脱毛部分がある
    • □ 脱毛部分の地肌はつるっとしていて、赤みやかさぶたは特にない
    • □ 脱毛部分の周りの毛を軽く引っ張ると、簡単に抜けることがある
    • □ 爪に小さな点状のへこみや、横筋が見られることがある
  • 感じ方の変化
    • □ 脱毛が始まる前に、軽いかゆみや違和感があった(※ほとんどは無症状です)
    • □ ヒリヒリとした痛みや、強いかゆみはない
  • 症状が出る場所
    • □ 頭髪
    • □ 眉毛、まつ毛
    • □ ひげ、わき毛、すね毛など
  • 悪化するタイミング
    • □ 特に決まったタイミングはなく、急に始まった
    • □ 短期間で脱毛部分が大きくなったり、数が増えたりした

これらの症状に複数当てはまる場合や、急激に悪化した場合は、ご自身で判断せず、できるだけ早く皮膚科専門医に相談しましょう。

皮膚科で行う主な治療法

皮膚科での円形脱毛症の治療は、脱毛の範囲や進行度、年齢などに応じて選択され、基本的に保険診療が中心となります。治療の目標は、毛根への攻撃を抑え、再び髪の毛が生える環境を整えることです。

  • 外用薬(塗り薬)

脱毛部分に直接塗ることで、免疫の過剰な反応を抑え、発毛を促します。

  • ステロイド外用薬: 炎症を抑える最も一般的な治療薬です。「ステロイドは怖い薬」というイメージがあるかもしれませんが、専門医の指導のもとで、決められた期間・量を正しく使えば、非常に効果的で安全な治療です。副作用についてもきちんと説明しますので、ご安心ください。
  • その他の外用薬: 血行を促進する薬(フロジン液など)を併用することもあります。
  • 内服薬(飲み薬)

脱毛の範囲が広い場合や、進行が速い場合などに用いられます。

  • 抗アレルギー薬: アトピー素因が関与していると考えられる場合に有効なことがあります。
  • セファランチン、グリチルリチン製剤: 髪の毛の成長を助けたり、炎症を抑えたりする目的で使われます。
  • ステロイド内服薬: 症状が重い場合に、短期間集中的に免疫反応を抑えるために用いることがあります。
  • その他の治療法
    • ステロイド局所注射: 脱毛斑に直接ステロイドを注射し、局所的に強い効果を発揮させます。成人の固定した脱毛斑によく行われます。
    • 光線療法(エキシマライト、ナローバンドUVB): 紫外線を照射して、免疫の働きを調節する治療法です。痛みはなく、お子様にも行いやすい治療です。
    • 局所免疫療法(SADBE療法): 特殊な化学物質を塗り、人工的にかぶれを起こすことで、毛根への攻撃に向かっていた免疫の注意をそらし、発毛を促す治療です。広範囲の脱毛症に有効性が高く、日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨されています。

明日からできるセルフケアと予防策

皮膚科での治療と並行して、ご自宅でのセルフケアも非常に重要です。ここでは、「守りのケア」と「攻めのケア」に分けてご紹介します。

  • 症状を悪化させない守りのケア
    • 正しい洗髪: 頭皮を傷つけないよう、指の腹で優しくマッサージするように洗いましょう。洗浄力の強すぎるシャンプーは避けてください。
    • 紫外線対策: 脱毛部分は日焼けしやすいため、外出時は帽子や日傘で頭皮を守りましょう。
    • 刺激の少ないヘアスタイル: 髪を強く引っ張るような髪型は避け、頭皮への負担を減らしましょう。
  • 良い状態を保つための攻めのケア
    • バランスの取れた食事: 髪の主成分であるタンパク質や、その働きを助ける亜鉛、鉄分、ビタミン類を意識して摂りましょう。
    • 質の良い睡眠: 睡眠中に分泌される成長ホルモンは、毛母細胞の活性化に不可欠です。毎日6〜7時間以上の睡眠を心がけましょう。
    • ストレスマネジメント: 「ストレスを溜めない」というのは難しいですが、ご自身に合った方法で上手に発散することが大切です。軽い運動や趣味の時間、リラックスできる時間を作りましょう。

よくあるご質問(Q&A)

やはりストレスが一番の原因ですか?

 一概には言えません。ストレスはあくまで発症や悪化の「きっかけ」の一つです。根本的な原因としては、ご自身の免疫システムが関わる「自己免疫疾患」という体質的な側面が大きいと考えられています。ですから、「あの時のストレスのせいだ」とご自身を責める必要は全くありません。ストレスの有無にかかわらず発症する方も大勢いらっしゃいます。原因探しに悩みすぎず、まずは適切な治療を開始することが大切です。

子供にもできる治療はありますか?

はい、もちろんあります。お子様の場合は、心身への負担が少ない治療法から選択します。まずはステロイドの塗り薬や、フロジン液などの血行促進剤が基本となります。症状によっては、痛みのない光線療法(エキシマライトなど)も良い選択肢です。飲み薬や注射は、体の成長への影響も考慮し、慎重に判断します。保護者の方の不安にも寄り添いながら、ご本人にとって最適な治療法を一緒に考えていきますので、安心してご相談ください。

ウィッグを使う際の注意点はありますか?

ウィッグは、脱毛部をカバーし、心理的な負担を軽減する非常に有効な手段です。選ぶ際は、通気性の良い素材のものを選び、長時間つけっぱなしにせず、時々外して頭皮を休ませてあげましょう。ご帰宅後はウィッグを外し、優しくシャンプーをして頭皮を清潔に保つことが大切です。最近は医療用ウィッグも種類が豊富で、自治体によっては購入費用の助成制度もありますので、調べてみるのも良いでしょう。

一人で悩まず、皮膚科医にご相談ください

  • 円形脱毛症の主な原因は「自己免疫疾患」であり、ストレスだけが原因ではありません。
  • 他人にうつることはなく、正しい治療で多くの場合改善が期待できます。
  • 治療法には塗り薬、飲み薬、光線療法など様々な選択肢があり、症状や年齢に合わせて選びます。
  • 治療と並行して、生活習慣を見直し、頭皮に優しいセルフケアを心がけることが大切です。

円形脱毛症は、見た目の問題から一人で抱え込んでしまいがちな病気です。しかし、その悩みは専門家と一緒なら解決できることがたくさんあります。不安な気持ちを一人で抱え込まず、ぜひお近くの皮膚科専門医にご相談ください。あなたのその一歩が、改善への大きな一歩となるはずです。

この記事は、皮膚科医 山田太郎の監修のもと作成しています。

所属:地域皮膚科クリニック

経歴:〇〇大学医学部卒業後、〇〇大学病院皮膚科を経て、地域医療に従事。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。