天疱瘡

皮膚科疾患ガイド

天疱瘡

天疱瘡は、皮膚や粘膜の細胞同士のつながりに対する自己抗体ができることで、水ぶくれやただれが起こる自己免疫性の病気です。まれな病気ですが、早く診断して治療を始めることが大切です。

監修:栗原佑一(皮膚科専門医)

作成日:2026年06月11日

最終更新日:2026年07月27日

―― 要点 ――

天疱瘡は、自分の免疫が皮膚のタンパク質(デスモグレイン)を攻撃することで、破れやすい水ぶくれやただれができる自己免疫性水疱症です。口の中のただれから始まることも多く、「口内炎が治らない」と思っているうちに広がることがあります。

診断には、皮膚生検と血液検査(抗デスモグレイン抗体)が重要です。治療はステロイド内服が基本で、症状や経過に応じて免疫抑制薬やリツキシマブなどを組み合わせます。

天疱瘡は国の指定難病に含まれており、条件を満たす場合は医療費助成の対象になることがあります。

天疱瘡とは?

皮膚の細胞同士は、デスモグレインというタンパク質などでつながっています。天疱瘡では、このタンパク質に対する自己抗体ができ、細胞同士のつながりがはずれて、表皮の中に水ぶくれができます。

主な病型には、口の中など粘膜の症状を伴いやすい尋常性天疱瘡と、皮膚だけに症状が出やすい落葉状天疱瘡があります。水ぶくれは薄くて破れやすく、「水ぶくれ」ではなく「ただれ」や「かさぶた」として気づかれることも少なくありません。

よくある症状

見た目の変化

破れやすい水ぶくれ、じゅくじゅくしたただれ、かさぶた、口の中や唇のただれがみられます。一見正常な皮膚をこすると皮がずれてしまうことがあります。

感じ方の変化

ただれた部分の痛み、しみる感じが中心です。口の中に症状があると、食事や歯みがきがつらくなり、体重が減ることもあります。

出やすい部位

口の中、唇、頭部、顔、胸、背中、わきや股など、こすれやすい部位に出ることがあります。落葉状天疱瘡では頭部、顔、胸、背中が中心になります。

悪化しやすいタイミング

こすれや外的刺激で症状が広がることがあります。一部の薬剤が関係する場合もあるため、服薬歴の確認が必要です。

このような症状は皮膚科にご相談ください

  • 口内炎やただれが何週間も治らない
  • 破れやすい水ぶくれを繰り返す
  • 皮膚がむけて、じゅくじゅくした部分が広がる
  • 食べ物や歯みがきで口の中がしみて困っている
  • かさぶたやただれが頭や顔、胸、背中に続く

こうした状態が長引く場合は、皮膚科でご相談ください。

早めの受診をおすすめする症状

  • 口の中のただれで食事や水分が十分にとれない
  • 水ぶくれやただれが急に広がっている
  • 発熱や強いだるさを伴う
  • 目や陰部などの粘膜にも症状がある
  • 体重が減ってきている

似ている病気・見分けるポイント

天疱瘡は、口内炎、薬疹、ヘルペス、ほかの水疱症などと似た症状で始まることがあります。長引くただれや繰り返す水ぶくれは、見た目だけで判断せず検査で確認することが大切です。

口内炎・口腔カンジダ

似ている点:口の中のただれや痛みが似ます

見分けるポイント:治るまでの期間、広がり、皮膚症状の有無がポイントです

受診の目安:数週間治らない場合

類天疱瘡

似ている点:水ぶくれができる点が似ます

見分けるポイント:水ぶくれの破れやすさ、年齢、生検・抗体検査で区別します

受診の目安:高齢の方の水ぶくれが続く場合

単純ヘルペス・帯状疱疹

似ている点:水ぶくれやただれが似ます

見分けるポイント:分布、痛み、再発のしかたで見分け、必要に応じて検査を行います

受診の目安:痛みが強い、片側に出る場合

重症の薬疹

似ている点:粘膜のただれや皮膚のむけが似ます

見分けるポイント:新しく始めた薬、発熱、目の症状に注目します

受診の目安:発熱や目の充血を伴う場合は早めに受診

とびひ・皮膚感染症

似ている点:じゅくじゅくやかさぶたが似ます

見分けるポイント:細菌検査の結果や経過、抗菌薬への反応を確認します

受診の目安:治療しても広がる場合

原因と悪化要因

体質・免疫などの内的要因

デスモグレインに対する自己抗体が原因です。なぜ自己抗体ができるのかは十分に分かっていませんが、体質や免疫の働きが関係すると考えられています。

生活習慣・環境などの外的要因

こすれや刺激で症状が悪化することがあります。一部の薬剤に関連して天疱瘡に似た症状が出ることも知られています。

診断で大切なポイント

天疱瘡は病型や重症度によって治療の強さが変わります。口の中だけの症状か、皮膚にも広がっているか、食事への影響、全身状態を含めて評価します。

皮膚科で行う検査・診断

診断には皮膚生検が重要です。病理検査で表皮の中の水ぶくれを確認し、蛍光抗体法という方法で自己抗体の沈着を調べます。

血液検査では、抗デスモグレイン1抗体・抗デスモグレイン3抗体を測定します。抗体の値は診断だけでなく、治療中の病気の勢いを確認する参考にもなります。

皮膚科で行う主な治療

天疱瘡では、自己免疫による水ぶくれとびらんを抑え、皮膚・粘膜の感染、痛み、食事への影響を防ぐことが治療の中心です。病型と重症度を確認し、全身治療を開始する場所や、その後の減量・維持療法を計画します。

ステロイド内服

治療の基本はステロイドの内服です。症状の範囲や病型に応じて量を決め、改善に合わせて少しずつ減らしていきます。自己判断で中止すると再燃することがあるため、減らし方が重要です。

免疫抑制薬・その他の治療

ステロイドだけで不十分な場合や、ステロイドを減らすために、免疫抑制薬を併用することがあります。難治例では、リツキシマブ(抗CD20抗体)、大量ガンマグロブリン静注療法、血漿交換、ステロイドパルス療法などが検討されます。これらの多くは入院設備のある医療機関で行われます。

医療費助成について

天疱瘡は国の指定難病に含まれており、重症度などの条件を満たす場合は医療費助成の対象になることがあります。申請には診断書などが必要です。

自宅でできるセルフケア

治療中は、皮膚や口の中を傷つけない工夫と、感染や再燃の変化を早めに見つけることが大切です。全身治療は自己判断で減量・中止せず、検査と診察を続けます。

  • 水ぶくれやただれを無理につぶしたりこすったりしない
  • 口の中に症状があるときは、刺激の強い食べ物を避ける
  • 処方された薬を自己判断で中止しない
  • 感染予防のため、ただれた部分を清潔に保つ
  • 体調や食事量の変化をメモして受診時に伝える

やってはいけないこと・注意点

  • 治らない口内炎を市販薬だけで様子を見続ける
  • ステロイドを自己判断で急にやめる
  • ただれを民間療法で処置する
  • 通院を自己判断で中断する

よくある質問

Q1. 天疱瘡は治りますか?

経過には個人差があります。治療で症状を抑え、抗体の値や皮膚の状態を確認しながら、薬を少しずつ減らしていくことを目指します。長期間の通院が必要になることが多い病気です。

Q2. うつる病気ですか?

うつりません。自分の免疫の働きによる病気で、感染症ではありません。

Q3. 口の中だけの症状でも天疱瘡のことがありますか?

あります。尋常性天疱瘡は口の中のただれから始まることが多く、皮膚症状が出る前の段階では口内炎と区別がつきにくいことがあります。

Q4. ステロイドの副作用が心配です。

ステロイドには血糖、血圧、骨、感染症などへの影響があり、定期的な検査と予防的な対策を行いながら使います。副作用を早めに把握し、必要な治療を続けられるように対応を一緒に考えます。

Q5. 医療費の負担が心配です。

指定難病の医療費助成の対象になる場合があります。条件や申請方法は、診断後に説明を受けてください。

皮膚科受診を考えている方へ

治りにくい口内炎や破れやすい水ぶくれは、一般的な口内炎や湿疹と区別しにくいことがあります。診察では、皮膚生検や抗体検査が必要か、入院治療を考える重症度かを判断し、安定後の通院治療についてもご説明します。

食事や水分がとれない、ただれが急に広がる、発熱がある場合は早めに受診してください。指定難病の制度や長期治療への不安も、病状に応じて相談できます。

当院での診療について

湘南皮膚科の院長は、大学病院などで自己免疫水疱症の診療と研究に携わってきており、天疱瘡を専門領域の一つとしています。

当院では、皮膚の状態と経過を診て、皮膚生検と採血で診断したうえで治療方針を提案します。高用量ステロイドによる導入治療、リツキシマブ、血漿交換など、入院や全身管理が必要な治療は連携医療機関と協力して進めます。病状が落ち着いた後の通院治療と経過観察にも対応し、指定難病申請に必要な診断書の作成・更新についてもご相談いただけます。

治らない口内炎や破れやすい水ぶくれがある方は、早めにご相談ください。

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診療時間・アクセス

まとめ

  • 天疱瘡は自己抗体による水疱症で、口の中のただれから始まることがあります
  • 診断には皮膚生検と抗デスモグレイン抗体の検査が重要です
  • 治療はステロイド内服が基本で、リツキシマブなどの選択肢もあります
  • 指定難病として医療費助成の対象になる場合があります
  • 治らない口内炎や破れやすい水ぶくれは早めに受診してください

※この記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療の代わりになるものではありません。

監修者情報


監修:栗原佑一

所属:湘南皮膚科

資格:日本専門医機構認定 皮膚科専門医

作成日:2026年06月11日  最終更新日:2026年07月27日