皮膚科疾患ガイド
疥癬
疥癬は、ヒゼンダニというごく小さなダニが皮膚に寄生して起こる病気です。高齢者施設や家庭内で広がることがあり、正しい診断と周囲の方への対応が重要です。
監修:栗原佑一(皮膚科専門医)
作成日:2026年06月11日
最終更新日:2026年07月27日
―― 要点 ――
疥癬は、ヒゼンダニが皮膚の角質に寄生して起こる感染症で、夜間に強くなる激しいかゆみが特徴です。指の間、手首、おなか、太ももの内側、男性の陰部などに、小さな赤いぶつぶつや、疥癬トンネルと呼ばれる細い線状の皮疹が出ます。
診断は、ダーモスコピーや顕微鏡検査でダニや卵を確認して行います。治療には、イベルメクチンの内服やフェノトリンローションの外用が使われます。
家族や同居者、介護スタッフに同様のかゆみがある場合は、同時に診断・治療することが解決の近道です。通常の疥癬では、過度な消毒や隔離は必要ありません。
このページの目次
疥癬とは?
ヒゼンダニ(体長約0.4mm)が皮膚の最も外側の角質層に寄生し、トンネルを掘って卵を産むことで起こります。肌と肌の直接接触でうつることが中心で、性別・年齢を問わず起こります。
ダニの数が非常に多くなる角化型疥癬(重症型)では、厚いかさぶたのような皮疹となり、感染力が強くなるため、対応が大きく変わります。免疫力が低下した方や高齢の方に起こりやすい型です。
よくある症状
見た目の変化
小さな赤いぶつぶつ、かき壊し、しこりのような発疹(特に陰部やわき)、指の間や手首の細い線状の皮疹(疥癬トンネル)がみられます。
感じ方の変化
非常に強いかゆみが特徴で、特に夜、布団に入って温まると強くなります。
出やすい部位
指の間、手首、ひじ、わき、おなか、おしり、太ももの内側、男性の陰部などです。成人では顔や頭には出にくいとされています(乳幼児や角化型では出ることがあります)。
感染してから症状が出るまで
初めての感染では、症状が出るまで1か月程度かかることがあります。このため、感染の機会に心当たりがないことも多くあります。
このような症状は皮膚科にご相談ください
- 夜になると我慢できないほどかゆい
- 指の間や手首に小さなぶつぶつがある
- 家族や同居者にも同じようなかゆみがある
- 介護施設・医療機関の利用や勤務がある
- 湿疹の治療をしてもかゆみがどんどん悪化する
早めの受診をおすすめする症状
- 家族内・施設内で複数の人がかゆがっている
- 湿疹としてステロイドを塗っても悪化する
- 高齢の方や寝たきりの方に厚いかさぶた状の皮疹がある(角化型の可能性)
- かき壊しから感染を起こしている
似ている病気・見分けるポイント
湿疹・皮脂欠乏性湿疹
似ている点:かゆみと赤いぶつぶつが似ます
見分けるポイント:夜間の激しいかゆみ、指間・陰部の皮疹、周囲の流行が手がかりです
受診の目安:治療しても悪化する場合
類天疱瘡
似ている点:高齢の方の強いかゆみが似ます
見分けるポイント:水ぶくれの有無、抗体検査、顕微鏡検査で区別します
受診の目安:高齢の方のかゆみが続く場合
虫刺され
似ている点:かゆいぶつぶつが似ます
見分けるポイント:露出部かどうか、季節、数や分布がポイントです
受診の目安:増え続ける場合
あせも
似ている点:体のぶつぶつが似ます
見分けるポイント:汗をかく部位か、夜間のかゆみの強さで見分けます
受診の目安:夜のかゆみが強い場合
シラミ症
似ている点:強いかゆみが似ます
見分けるポイント:頭や陰毛部の虫体・卵の有無を確認します
受診の目安:部位が限られる場合
原因と広がり方
うつる経路
肌と肌の長時間の接触が中心です。介護、添い寝、性的接触などでうつることがあります。通常の疥癬では、短時間の接触や衣類・寝具を介した感染の可能性は高くありません。
角化型疥癬の場合
ダニの数が桁違いに多く、はがれた角質(かさぶた)にも多数のダニが含まれるため、衣類や寝具を介してもうつります。施設内流行の原因になりやすく、個室管理を含めた対応が必要です。
診断で大切なポイント
「湿疹として治療されてきたが悪化し続けている」「周囲にもかゆい人がいる」という経過は、疥癬を疑う重要な手がかりです。
皮膚科で行う検査・診断
ダーモスコピーで疥癬トンネルやダニを探し、皮疹の一部を採って顕微鏡でダニや卵を確認します。1回の検査で見つからないこともあり、疑いが強い場合は日を変えて再検査することがあります。
皮膚科で行う主な治療
疥癬では、ヒゼンダニを駆除し、同時に感染している可能性がある方も治療して再感染を防ぐことが中心です。通常疥癬か角化型疥癬か、家庭や施設での接触状況、年齢や妊娠の有無をふまえて薬と環境対応を決めます。
内服薬・外用薬
イベルメクチンの内服、またはフェノトリンローションの外用が標準的な治療です。卵には効きにくいため、1〜2週間後に2回目の治療を行うことが一般的です。体重や年齢、妊娠の有無によって使える薬が変わります。
かゆみへの対応
治療後もかゆみがしばらく残ることがあります(ダニが死んだ後のアレルギー反応)。かゆみ止めの内服や外用で対応しながら、治療効果を顕微鏡検査で確認します。
周囲の方の治療
同居家族や密に接触した方に症状がある場合は、同時に治療することが再感染防止に重要です。
家庭・施設での対応
家庭や施設では、過度な消毒よりも、治療対象者をそろえ、衣類や寝具を適切に扱い、直接の皮膚接触を減らすことが重要です。角化型疥癬では感染力が高いため、対応方法が異なります。
- 同居の方にかゆみがないか確認し、症状があれば一緒に受診する
- 衣類・寝具は通常の洗濯で問題ありません(通常の疥癬の場合)
- 50度以上のお湯に10分以上つけてから洗う方法は、より確実です
- 部屋の掃除は通常の掃除機がけで十分です。過度な消毒や殺虫剤の散布は不要です
- 角化型疥癬の場合は、医療者の指示に従った個別の対応が必要です
やってはいけないこと・注意点
- 「ダニのせいかも」と市販の殺虫剤を体に使う
- 湿疹と決めつけてステロイドだけを塗り続ける
- 家族に症状があるのに一人だけ治療する
- 角化型なのに通常の対応で済ませる
よくある質問
Q1. 疥癬はどこでうつりますか?
肌と肌の長時間の接触が中心です。介護や添い寝など、密な接触の機会があった場合に疑います。心当たりがなくても、症状が出るまで1か月程度かかるため、気づかないことも多くあります。
Q2. お風呂や洗濯はどうすればよいですか?
通常の疥癬では、入浴は普段どおりで構いません(タオルの共有は避けます)。洗濯も通常の方法で問題ありません。
Q3. 治療すればすぐかゆみは止まりますか?
ダニが死んだ後も、アレルギー反応によるかゆみが数週間続くことがあります。悪化し続ける場合は再評価が必要です。
Q4. 施設で働いています。出勤できますか?
通常の疥癬では、治療を開始すれば過度な就業制限は不要とされることが多いですが、施設の規定と主治医の判断によります。角化型の場合は対応が異なります。
Q5. 完全に治ったかどうかはどう分かりますか?
皮疹とかゆみの経過に加え、顕微鏡検査でダニや卵がいないことを確認します。治療後も定期的な確認をおすすめします。
皮膚科受診を考えている方へ
疥癬は湿疹に似ており、治療後もしばらくかゆみが残るため、「治っていない」「またうつった」と判断しにくいことがあります。診察では、顕微鏡検査の必要性や治療後の皮膚の状態を確認し、治療対象となる接触者と家庭・施設での対応をご案内します。
夜間の強いかゆみが家族や施設内で広がる、厚いかさぶたを伴う、免疫が低下している方に症状がある場合は早めにご相談ください。
当院での診療について
湘南皮膚科では、ダーモスコピーと院内の顕微鏡検査でヒゼンダニを確認し、診断したうえで治療を行います。ご家族や介護に関わる方の症状確認と同時治療、施設内で発生した場合の対応についてもご相談いただけます。角化型疥癬など入院管理が必要な場合は、連携医療機関へ紹介します。
ご家庭や介護施設で同じ時期にかゆみが広がっている場合は、接触した方の範囲が分かる情報もあわせてご相談ください。
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診療時間・アクセス
まとめ
- 疥癬はヒゼンダニによる感染症で、夜の強いかゆみが特徴です
- 指の間・手首・陰部の皮疹と、周囲のかゆみの有無が手がかりです
- 顕微鏡検査で確認してから治療します
- 通常の疥癬では過度な消毒や隔離は不要です
- 同居の方の同時治療が再感染防止のカギです
※この記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療の代わりになるものではありません。
監修者情報
監修:栗原佑一
所属:湘南皮膚科
資格:日本専門医機構認定 皮膚科専門医
作成日:2026年06月11日 最終更新日:2026年07月27日
