皮膚科疾患ガイド
爪の病気・爪のトラブル
爪は、皮膚の一部です。見た目は小さな変化でも、爪水虫、外傷、湿疹、乾癬、薬剤、全身状態、まれに腫瘍が関係することがあります。
監修:栗原佑一(皮膚科専門医)
作成日:2026年05月28日
最終更新日:2026年07月27日
―― 要点 ――
爪の変化は、病名から考えるよりも「色」「厚さ」「形」「浮き」「痛み」「周りの腫れ」という見た目から整理すると分かりやすくなります。
白く濁る、厚くなる、もろくなる場合は爪水虫がよく知られていますが、乾癬、外傷、加齢変化、爪の腫瘍などでも似た変化が出ます。黒い線が太くなる、色むらがある、爪の周りの皮膚まで黒くなる、爪が壊れる場合は早めに皮膚科で確認してください。
爪は伸びるのが遅いため、治療を始めても見た目の変化には時間がかかります。手の爪は数か月、足の爪は1年以上かけて入れ替わることがあります。
このページの目次
爪はどこで作られるのか
ふだん「爪」と呼んでいる硬い部分は、医学的には爪甲といいます。爪甲を作る根元の部分を爪母、爪甲の下の土台を爪床、爪の周りの皮膚を爪郭と呼びます。
どこに異常が起きるかで、出てくる症状が変わります。
爪甲
役割:目に見える硬い爪
異常が起きたときの例:濁る、厚くなる、割れる、もろくなる
爪母
役割:爪を作る根元
異常が起きたときの例:横線、へこみ、爪が根元から剥がれる
爪床
役割:爪の下の土台
異常が起きたときの例:爪が浮く、出血する、爪の下が痛む
爪郭
役割:爪の周りの皮膚
異常が起きたときの例:赤く腫れる、膿が出る、肉芽ができる
爪の病気では、爪だけでなく、足の皮膚、手荒れ、皮疹、関節の痛み、仕事やスポーツ、靴、ネイル施術、内服薬も一緒に確認します。
このような症状は皮膚科にご相談ください
- 爪が白い、黄色い、緑色、黒い
- 爪に黒い縦線がある
- 爪が厚い、切りにくい
- 爪が先端から浮く
- 爪が根元から剥がれてきた
- 巻き爪で痛い、赤く腫れる、膿が出る
- 爪の周りが腫れている
- 爪に小さなへこみや横線がある
- 爪の下にできものがある、強く痛む
- ジェルネイルやアクリルネイルの後から爪が変色した
受診の目安
爪の変化は、しばらく様子を見てもよいものもあります。ただし、次のような場合は早めに皮膚科で確認してください。
- 1本の爪だけに新しい黒い線が出てきた
- 黒い線が太くなる、色むらがある、爪の周りの皮膚まで黒くなる
- 爪が壊れる、出血する、ただれが続く
- 赤く腫れて痛い、膿が出る
- 爪の下が強く痛む、冷たい刺激で痛む
- 糖尿病、血流障害、免疫を抑える治療中で足の爪に異常がある
- 市販の水虫薬や自己処置でよくならない
- 複数の爪に急に横線や剥がれが出てきた
症状から考える爪の病気
爪の病気は、病名を先に覚えるより、見た目と経過から整理すると理解しやすくなります。
爪が白い・濁る
よくある原因:爪水虫、外傷、爪甲剥離、乾癬
注意したい病気・状態:全身状態に伴う白い爪、腫瘍
爪が黄色い
よくある原因:爪水虫、乾癬、外傷、爪甲肥厚
注意したい病気・状態:黄爪症候群など
爪が緑色
よくある原因:グリーンネイル、爪甲剥離と湿潤環境
注意したい病気・状態:慢性爪囲炎、人工爪関連
爪が黒い
よくある原因:爪下血腫、色素性母斑、薬剤性色素沈着
注意したい病気・状態:爪部悪性黒色腫
黒い縦線がある
よくある原因:メラノニキア、母斑、外傷、薬剤
注意したい病気・状態:太くなる、1本だけ、爪周囲に広がる場合は要注意
爪が厚い
よくある原因:爪水虫、乾癬、外傷、加齢、靴の圧迫
注意したい病気・状態:爪下外骨腫、爪下腫瘍
爪が浮く
よくある原因:爪甲剥離、爪水虫、乾癬、外傷、薬剤
注意したい病気・状態:甲状腺疾患、腫瘍
爪が剥がれる
よくある原因:外傷、手足口病後、薬剤、全身状態の変化
注意したい病気・状態:爪母の障害、重い感染後、腫瘍
爪に小さなへこみ
よくある原因:乾癬、円形脱毛症、湿疹
注意したい病気・状態:乾癬性関節炎の確認
爪に横線
よくある原因:Beau線、外傷、発熱後、薬剤
注意したい病気・状態:全身疾患、栄養状態の変化
爪の周りが腫れる
よくある原因:爪囲炎(ひょう疽と呼ばれることがあります)、陥入爪、接触皮膚炎
注意したい病気・状態:ヘルペス性ひょう疽、膿瘍、皮膚がん
爪の下が激痛
よくある原因:爪下血腫、陥入爪
注意したい病気・状態:グロムス腫瘍、爪下外骨腫
この表は自己診断のためではありません。似て見える病気でも、必要な検査や治療が異なるため、長引く場合や変化がある場合は診察で確認します。
形の異常・力がかかって起こる爪トラブル
巻き爪と陥入爪
巻き爪は、爪の端が内側に巻いている状態です。痛みがないこともあります。陥入爪は、爪の端が皮膚に食い込み、赤み、腫れ、痛み、膿、肉芽を起こす状態です。巻き爪と陥入爪は重なることもありますが、同じ意味ではありません。
爪を深く切り込むと、一時的に楽になっても、伸びる途中でさらに食い込みやすくなることがあります。痛みが強い、膿がある、肉芽がある、何度も繰り返す場合は受診をおすすめします。
詳しくは、陥入爪(巻き爪・爪が食い込む)のページでも説明しています。
爪甲肥厚・爪甲鉤彎症
爪が厚くなる状態を爪甲肥厚、爪が角のように強く曲がって厚くなる状態を爪甲鉤彎症と呼びます。靴の圧迫、外傷、加齢、爪水虫、乾癬などが関係します。無理に削ると出血や感染の原因になることがあります。
爪が浮く・剥がれる病気
爪の先端側から爪甲と爪床が離れる状態を、爪甲剥離といいます。爪水虫、乾癬、外傷、薬剤、甲状腺疾患、接触刺激などで起こることがあります。
根元側から爪が浮いて抜ける状態は、爪甲脱落と呼ばれます。強い外傷、発熱を伴う感染症、手足口病の後、薬剤、全身状態の変化などで、爪母の働きが一時的に止まった後に起こることがあります。小児では、手足口病の数週間から数か月後に爪が剥がれることがあります。
ぶつけた後に爪の下が黒くなる場合は、爪下血腫のことがあります。痛みが強い、爪が大きく浮いている、骨折が心配な外傷では早めに確認しましょう。
感染症による爪の病気
爪水虫・爪真菌症
爪水虫は、白癬菌という真菌が爪に感染する病気です。爪が白や黄色に濁る、厚くなる、もろくなる、爪の下に角質がたまるなどの症状が出ます。
ただし、爪が濁る病気は爪水虫だけではありません。乾癬、外傷、靴の圧迫、加齢変化、腫瘍などでも似た見た目になります。治療前に、顕微鏡検査などで真菌を確認することが大切です。
爪囲炎(ひょう疽)・グリーンネイル
爪の周りが急に赤く腫れて痛む場合は、急性爪囲炎が考えられます。一般には「ひょう疽」と呼ばれることもあります。膿がたまっている場合は処置が必要になることがあります。
爪の周りの炎症が長引く慢性爪囲炎では、水仕事、洗剤、消毒、ネイル施術、湿疹、カンジダなどが関係します。爪が緑色に見えるグリーンネイルは、爪甲剥離や湿った環境に緑膿菌が関係して起こることがあります。
なお、強い痛みと小さな水ぶくれが目立つ場合は、細菌性の爪囲炎ではなくヘルペス性ひょう疽のことがあります。この場合は、切開や自己処置が適さないことがあるため、診察で見分けることが大切です。
炎症性皮膚疾患に伴う爪の変化
爪の変化は、皮膚の病気の一部として出ることがあります。
乾癬
爪の変化の例:点状陥凹、爪甲剥離、爪下角質増殖、油滴状変化
確認すること:頭皮、肘、膝、関節の痛み
アトピー性皮膚炎・手湿疹
爪の変化の例:爪周囲炎、横溝、表面の荒れ、爪甲剥離
確認すること:手荒れ、水仕事、かゆみ
円形脱毛症
爪の変化の例:点状陥凹、粗造爪、薄い爪
確認すること:脱毛斑、眉毛や体毛の変化
扁平苔癬
爪の変化の例:縦すじ、爪が薄くなる、瘢痕性変形
確認すること:口の中、手首、足首、頭皮
接触皮膚炎
爪の変化の例:爪周囲の赤み、かゆみ、爪甲剥離
確認すること:ジェルネイル、アクリル、洗剤、消毒
爪だけを見て水虫と思っていたら乾癬だった、ということもあります。皮膚や関節の症状も一緒に確認することが大切です。
爪の腫瘍・できもの
爪の腫瘍は、できものそのものよりも「爪の変形」「爪の下の痛み」「黒い線」として気づかれることがあります。1本の爪だけに変化が続く場合は、特に経過が重要です。
粘液嚢腫
見え方・症状:爪の根元近くのふくらみ、爪の縦溝
注意点:関節の変化と関係することがあります
グロムス腫瘍
見え方・症状:爪の下の強い痛み、冷たい刺激で痛い
注意点:小さくても痛みが強いことがあります
爪下外骨腫
見え方・症状:足の爪の下の硬い隆起、爪が持ち上がる
注意点:X線検査が必要になることがあります
化膿性肉芽腫
見え方・症状:赤く出血しやすいできもの
注意点:陥入爪、外傷、薬剤などと関係します
爪周囲のウイルス性いぼ
見え方・症状:爪の周りのざらざらしたできもの
注意点:治りにくい場合は腫瘍との区別が必要です
有棘細胞癌
見え方・症状:治らないいぼ状の病変、びらん、出血、爪の破壊
注意点:慢性爪囲炎やウイルス性いぼに似ることがあります
爪部悪性黒色腫
見え方・症状:黒い縦線、色素の広がり、爪の破壊
注意点:早めの確認が重要です
黒い線があるから必ず悪性というわけではありません。一方で、画像検索や自己判断だけで良性と決めることはできません。幅が広がる、色むらがある、爪の周囲の皮膚まで色が広がる、出血や爪の破壊を伴う場合は早めに受診してください。
全身状態・薬剤・生活習慣による爪の変化
爪の変化だけで内科疾患を診断することはできません。ただし、複数の爪に同時に変化が出る、息切れ、むくみ、発熱、体重減少、貧血症状などを伴う場合は、皮膚科だけでなく内科的な確認が必要になることがあります。
ばち指、スプーン爪、横線、爪甲脱落、線状出血、黄色い爪などは、全身状態や薬剤、栄養状態、感染症、外傷などと関係することがあります。
ジェルネイル、アクリルネイル、リムーバー、頻回の消毒、洗剤、水仕事、抗がん剤、分子標的薬などでも、爪の変形、爪囲炎、爪甲剥離、色素沈着、割れやすさが起こることがあります。診察時には、ネイル施術歴、仕事での水仕事、内服薬や注射薬も確認します。
診察のときにお聞きしたいこと
- いつから変化したか
- 1本だけか、複数の爪か
- 手の爪か足の爪か
- 色、厚み、浮き、痛み、出血、膿の有無
- 靴、スポーツ、ぶつけた記憶、爪の切り方
- 水仕事、洗剤、消毒、ネイル施術歴
- 足の皮むけ、水虫の既往
- 皮膚の赤み、かさつき、脱毛、関節の痛み
- 糖尿病、血流障害、免疫を抑える治療、内服薬
検査について
爪水虫が疑われる場合は、爪や皮膚の一部を採って、顕微鏡で真菌を確認します。採取する場所によって結果が変わることがあるため、必要に応じて再検査や培養検査を検討します。
黒い線やできもの、治らないびらん、爪の破壊がある場合は、ダーモスコピーで色や構造を確認します。悪性が否定できない場合や診断を確定したい場合は、皮膚生検や病理検査、連携医療機関への紹介を検討します。
爪の下の硬い隆起や外傷が疑われる場合は、X線など画像検査が必要になることがあります。
治療について
爪の治療は、見た目を整えることより、真菌、炎症、外傷、圧迫、腫瘍など原因を見分けることから始まります。薬、爪の切り方や保護、排膿、処置・手術、経過観察を原因に応じて選びます。
爪水虫では、外用薬や内服薬を症状に応じて検討します。内服薬を使う場合は、肝機能、併用薬、妊娠の可能性などを確認します。
陥入爪や爪囲炎では、爪の切り方、テーピング、外用薬、抗菌薬、排膿、処置、手術などを症状に応じて検討します。爪を深く切り込む自己処置は悪化につながることがあります。
爪乾癬や湿疹、接触皮膚炎では、皮膚の炎症を抑える治療、刺激を減らす生活調整、必要に応じた全身治療を検討します。
腫瘍が疑われる場合は、経過観察、ダーモスコピー、皮膚生検、切除、病理検査、連携医療機関への紹介を、病変の種類や部位に応じて判断します。
ご自宅で気をつけること
自宅では、深爪や削りすぎを避け、爪の色や形の変化を記録します。原因が分からないまま水虫薬やネイルケアを続けると、診断が遅れることがあります。
- 爪を深く切りすぎない
- 痛い爪を無理に削りすぎない
- 足を洗った後は指の間まで乾かす
- 靴は爪先に余裕のあるものを選ぶ
- ネイル施術後の痛み、腫れ、変色を放置しない
- 黒い線や色の変化は、写真で経過を残す
- 市販薬で悪化する場合は中止して相談する
- 糖尿病がある方は足の傷や爪の変化を早めに相談する
よくある質問
Q1. 爪が白く濁っています。爪水虫ですか?
爪水虫のこともありますが、乾癬、外傷、靴の圧迫、加齢変化などでも白く濁ります。治療前に真菌を確認することが大切です。
Q2. 黒い線があると、がんなのでしょうか?
黒い線のすべてが悪性ではありません。ただし、1本だけに新しく出た、太くなる、色むらがある、爪の周囲の皮膚まで黒くなる、爪が壊れる場合は早めに確認してください。
Q3. 爪が剥がれてきました。自然に治りますか?
外傷や手足口病後などでは、生え替わりを待つことがあります。ただし、痛み、腫れ、膿、出血、繰り返す剥がれ、1本だけの変化が続く場合は診察が必要です。
Q4. 巻き爪は自分で深く切ればよいですか?
深く切り込むと、爪が伸びる途中でさらに食い込みやすくなることがあります。赤み、腫れ、膿、肉芽がある場合は自己処置を続けず相談してください。
Q5. ジェルネイルで爪が緑色になりました。様子を見てよいですか?
グリーンネイルや爪甲剥離、爪囲炎が関係することがあります。ネイルを外す必要がある場合もあるため、痛み、浮き、におい、腫れがある場合は確認をおすすめします。
Q6. 爪の治療はどのくらい時間がかかりますか?
爪は伸びるのが遅いため、治療しても見た目の改善には時間がかかります。手の爪は数か月、足の爪は1年以上かけて入れ替わることがあります。
皮膚科受診を考えている方へ
爪の白濁、変形、剥がれ、黒い線は、同じ見た目でも原因が異なります。診察では、皮膚疾患や外傷が関係しているか、腫瘍を疑う変化がないかを確認し、真菌検査など必要な検査をご提案します。
痛みや膿がある、1本だけ変化が続く、黒い線が太くなる、爪の周囲まで色が広がる場合は、早めにご相談ください。爪は伸びるのに時間がかかるため、治療後の見通しも原因ごとに説明します。
当院での診療について
湘南皮膚科では、爪だけでなく、足の皮膚、手荒れ、皮膚疾患、外傷、薬剤、全身状態との関係もあわせて診療します。
必要に応じて真菌鏡検、ダーモスコピー、皮膚生検、採血を行います。爪水虫で内服薬を使う場合は、肝機能や併用薬を確認しながら治療を進めます。局所麻酔で可能な処置は、爪の状態と全身状態を診たうえで適否を判断し、画像検査や入院管理が必要な場合は連携医療機関へ紹介します。
爪の黒い線が広がる、周囲の皮膚まで色が及ぶ、痛みや出血が続く場合は、自己判断で長く様子を見ずにご相談ください。
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診療時間・アクセス
監修者情報
文責:皮膚科専門医 栗原佑一
所属:湘南皮膚科
資格:日本専門医機構認定 皮膚科専門医
作成日:2026年05月28日 最終更新日:2026年07月27日
参考文献・情報源
参照日:2026年7月11日
