皮膚科疾患ガイド
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、薬を塗るかどうかだけでなく、炎症をどの程度まで抑えるか、よい状態をどう保つかを一緒に考える病気です。
文責:皮膚科専門医 栗原佑一
作成日:2026年05月28日
最終更新日:2026年09月07日
―― 要点 ――
アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹がよくなったり悪くなったりしながら続く慢性炎症性の皮膚疾患です。治療の基本は、保湿などのスキンケア、炎症を抑える外用薬、悪化因子の確認です。
「ステロイドを使いたくない」「子どもに長く薬を使ってよいか不安」と感じる方もいます。大切なのは、炎症の強さ、部位、年齢に合わせて薬の強さ・量・期間を調整し、掻きこわしや睡眠障害を減らすことです。
じゅくじゅく、強い痛み、水ぶくれ、黄色いかさぶた、発熱、目の周りの悪化がある場合は、感染症や合併症を考えて早めに受診してください。
このページの目次
アトピー性皮膚炎とは?
皮膚のバリア機能の低下、免疫反応、乾燥、汗、刺激、感染などが重なり、湿疹とかゆみを繰り返す病気です。乳幼児では顔や体、成長すると首、肘や膝の内側、手などに出やすくなります。
「乾燥だけ」と思って保湿だけで続けていると、炎症が残ってかゆみが長引くことがあります。一方で、湿疹に見えても接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、白癬、疥癬、乾癬、薬疹など別の病気が隠れていることがあります。
よくある症状
見た目の変化
赤み、ざらつき、かさつき、小さなぶつぶつ、掻きこわし、じゅくじゅく、かさぶた、皮膚が厚くなる変化がみられます。
感じ方の変化
かゆみが中心です。夜間に強くなり、眠りにくい、集中しにくい、学校や仕事に影響することがあります。掻きこわすと痛みやしみる感じが出ます。
出やすい部位
乳幼児では顔、頭、体幹に出ることがあります。小児から成人では、首、肘や膝の内側、手、顔、まぶた、体幹などに出やすい傾向があります。
悪化しやすいタイミング
乾燥、汗、摩擦、入浴後、季節変化、睡眠不足、ストレス、感染、衣類、洗剤、化粧品、仕事や学校での刺激が関わることがあります。
このような症状は皮膚科にご相談ください
- かゆい湿疹を繰り返している
- 夜にかゆくて眠りにくい
- 保湿だけでは落ち着かない
- 外用薬をやめるとすぐ悪化する
- 顔、首、肘や膝の内側、手に湿疹が続く
- 掻きこわし、じゅくじゅく、かさぶたがある
- 子どもの湿疹が長引いている
気になる症状が一つでもある場合や、生活に影響している場合は、皮膚科にご相談ください。
早めの受診をおすすめする症状
- 痛みが強い、水ぶくれが急に増えた
- 黄色いかさぶた、膿、発熱がある
- 顔や目の周りが急に悪化した
- 全身に広がり、眠れないほどかゆい
- 乳幼児で湿疹が強く、哺乳や睡眠に影響している
- 免疫を抑える薬を使っている
似ている病気・見分けるポイント
アトピー性皮膚炎は湿疹を繰り返す病気ですが、かぶれ、感染症、疥癬、乾癬などが似た見た目になることがあります。長く続く湿疹でも、分布や経過がいつもと違う場合は診断を見直すことがあります。
接触皮膚炎
似ている点:赤み、かゆみ、ただれが似ることがあります
見分けるポイント:化粧品、金属、外用薬、仕事や生活用品との接触歴がポイントです
受診の目安:特定の部位だけ悪化する場合
皮膚感染症
似ている点:湿疹の悪化のように見えることがあります
見分けるポイント:黄色いかさぶた、水ぶくれ、痛み、発熱の有無で見分けます
受診の目安:急に広がる、痛みや発熱がある場合
疥癬
似ている点:強いかゆみが似ることがあります
見分けるポイント:夜間のかゆみ、家族内発症、手指や陰部の所見を調べます
受診の目安:家族や施設内でかゆみが広がる場合
乾癬
似ている点:赤みやかさつきが似ることがあります
見分けるポイント:境界のはっきりした紅斑、厚い鱗屑、爪や関節症状が手がかりです
受診の目安:頭皮・肘・膝に厚い皮疹が続く場合
皮膚リンパ腫など
似ている点:慢性湿疹のように見えることがあります
見分けるポイント:治療への反応、形、分布を見て、必要なら病理検査を行います
受診の目安:長期間治りにくい、形が不規則な場合
原因と悪化要因
体質・年齢・免疫などの内的要因
皮膚バリア機能、アレルギー体質、免疫反応、年齢による皮膚の特徴が関わります。気管支喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーを合併する方もいます。
生活習慣・環境などの外的要因
乾燥、汗、洗いすぎ、摩擦、衣類、寝具、洗剤、化粧品、職業性の刺激、感染、季節変化が悪化要因になることがあります。
診断で大切なポイント
皮膚科診療では、薬の種類だけでなく、塗る量、塗る範囲、塗る期間が重要です。炎症が残ったまま薬を減らすと、短期間で再燃することがあります。
診察のときにお聞きしたいこと
湿疹が始まった時期と出る場所、かゆみや睡眠への影響、これまで使った薬をお聞きします。薬の名前だけでなく、塗る量・範囲・期間や、続けにくかった理由もお伝えください。食事、汗、化粧品などとの関係や、ほかのアレルギー疾患の有無も確認します。
アトピー性皮膚炎の診断と、血液検査で分かること
アトピー性皮膚炎は、かゆみ、湿疹の出方、よくなったり悪くなったりする経過を合わせて診断します。血液検査は診断や病状を評価する手がかりの一つですが、検査値だけで原因や重症度を決めることはできません。
特定の食物やダニなどに対するIgE抗体が陽性でも、それが湿疹を悪化させているとは限りません。接触や食事と症状の関係を確かめて判断するため、結果だけを見て食事を制限しないでください。この考え方はアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024の検査の説明(PDF)でも示されています。
接触皮膚炎が疑われる場合はパッチテスト、白癬が疑われる場合は真菌検査、重症例や全身治療を考える場合は血液検査を検討します。食物アレルギー検査は、症状との関係を慎重に判断します。
皮膚科で行う主な治療法
アトピー性皮膚炎の治療は、多くの場合、保険診療で行う外用治療とスキンケアが基本です。治療では、かゆみや湿疹を一時的に抑えるだけでなく、症状が落ち着いた状態を保ち、睡眠や学校・仕事への影響を減らすことを目指します。
治療の柱は、薬物療法、スキンケア、悪化要因への対策です。ここでは、薬物療法を中心に説明します。
炎症を抑える塗り薬:部位・年齢に合わせた使い方
アトピー性皮膚炎の薬物療法では、炎症を抑える外用薬が中心になります。皮膚の状態、部位、年齢、これまでの治療反応を見ながら、薬の種類と強さ、塗る量、塗る期間を調整します。
- ステロイド外用薬:炎症を抑える基本的な外用薬です。強さは段階に分かれており、顔や首、体、手足など部位ごとの皮膚の厚さや、炎症の強さに合わせて選びます。必要な時期に必要な量を使うことが大切です。
- タクロリムス外用薬:ステロイドとは異なる仕組みで炎症を抑える薬です。顔や首など、部位によって選択肢になることがあります。塗り始めに刺激感が出ることがあります。
- デルゴシチニブ外用薬・ジファミラスト外用薬・タピナロフ外用薬:比較的新しい非ステロイド性の外用薬です。症状、年齢、部位、これまでの治療歴に応じて検討します。
- 非ステロイド系消炎外用薬:軽い湿疹で使われることがありますが、アトピー性皮膚炎の治療では使う場面が限られます。
炎症を十分に抑えられていないと、かゆみや掻きこわしが長引くことがあります。薬の副作用や使う期間が心配なときは、どこに、どのくらい、いつまで塗るかを医師と確認しましょう。自己判断で強い薬を長く使い続けることも避けてください。
内服薬(飲み薬)
かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を補助的に使うことがあります。眠気の出方には個人差があるため、生活への影響も含めて薬を選びます。
外用治療だけでは十分に抑えられない中等症から重症のアトピー性皮膚炎では、シクロスポリンなどの免疫抑制薬や、JAK阻害薬の飲み薬が選択肢になることがあります。これらは対象となる症状や年齢、必要な検査、感染症などの注意点を確認して使う薬です。
JAK阻害薬を含む飲み薬について詳しくは、アトピー性皮膚炎の全身療法(注射薬・飲み薬)で解説しています。
注射薬(生物学的製剤)
既存の治療で十分に抑えられない中等症以上のアトピー性皮膚炎では、デュピルマブなどの生物学的製剤を検討することがあります。炎症やかゆみに関わる特定の経路を抑える薬で、対象年齢や投与間隔、必要な検査、費用、自己注射の可否などを確認して判断します。
注射薬は「希望すればすぐに使う薬」ではなく、これまでの外用治療、重症度、全身状態を診たうえで適応を判断します。詳しくは、アトピー性皮膚炎の全身療法(注射薬・飲み薬)をご覧ください。
光線療法(紫外線療法)
外用薬だけで炎症やかゆみを抑えにくい場合、症状の範囲や重症度によっては、特定の波長の紫外線を照射する光線療法を検討することがあります。照射量を調整しながら継続する治療で、日焼けのような赤みやほてりなどに注意します。
光線療法について詳しくは、紫外線療法(光線療法)で解説しています。
治療の選択肢は増えていますが、基本は「皮膚の炎症を適切に抑え、よい状態を保つこと」です。自己判断で薬をやめたり、逆に漫然と続けたりせず、症状の変化に合わせて治療を見直していきましょう。
自宅でできるセルフケア
アトピー性皮膚炎のスキンケアは、乾燥や刺激から皮膚を守り、治療で落ち着いた状態を保つために続けます。湿疹の炎症が残っているときは、保湿だけで済ませず、炎症を抑える治療と組み合わせます。
薬物療法で炎症という「火」を静めながら、スキンケアで乾燥や刺激という火種を減らし、燃え広がりにくい皮膚の状態を整える、という考え方が大切です。
症状を悪化させないための守りのケア
- 洗浄:石けんやボディソープはよく泡立て、泡で皮膚をなでるように洗います。ナイロンタオルなどで強くこする洗い方は避け、洗浄成分が残らないようにぬるま湯でよくすすぎます。
- 保湿:入浴やシャワーの後は、皮膚が乾ききる前に保湿剤を塗ります。処方された保湿剤は、乾燥している部位だけでなく、湿疹を繰り返しやすい部位にも続けることがあります。塗る量や回数は、皮膚の状態に合わせて確認しましょう。
- 汗と刺激:汗をかいたら、できるだけ早めにやさしく洗い流すか、ぬれたタオルで押さえるように拭きます。爪を短くし、掻きこわしを減らすことも大切です。
- 衣類・環境:肌着は吸湿性があり、刺激の少ない素材を選ぶと続けやすくなります。タグや縫い目が刺激になることもあります。乾燥する季節は加湿や保湿の回数を調整します。
良い状態を保つための生活習慣
- 食事:基本は、いろいろな食品をバランスよく食べることです。食物アレルギーと決めつけて、自己判断で広い食事制限を続けることは避けましょう。食事との関係が疑われる場合は、症状の経過と検査結果を合わせて判断します。
- 睡眠:睡眠不足はかゆみや掻きこわしにつながることがあります。夜間のかゆみで眠れない場合は、生活習慣だけで我慢せず、炎症やかゆみを抑える治療を見直します。
- ストレス:ストレスや疲れが悪化に関わる方もいます。運動、休息、趣味など、自分に合う方法で気分転換の時間を持つことは治療の助けになります。
セルフケアは大切ですが、生活習慣だけで治す病気と考えないことも大切です。赤み、かゆみ、じゅくじゅくがある時は、炎症を抑える治療と組み合わせて整えていきます。
やってはいけないこと・注意点
- 炎症が残っているのに自己判断で薬を中止する
- 薬への不安や疑問を相談できないまま、必要な治療を避け続ける
- 逆に、強い外用薬を長期間自己判断で使う
- 食物アレルギーと決めつけて広い食事制限を続ける
- じゅくじゅくや水ぶくれを放置する
よくある質問
Q1. アトピー性皮膚炎は治りますか?
アトピー性皮膚炎の経過には個人差があります。年齢とともに軽くなる方もいますが、成人まで続く方もいます。治療では、かゆみや炎症を抑え、日常生活に支障が少ない状態を目指します。
Q2. ステロイド外用薬は使わない方がよいですか?
ステロイド外用薬は、アトピー性皮膚炎の炎症を抑える基本的な治療薬です。部位、年齢、炎症の強さに合わせて種類と量・期間を決めます。副作用にも注意が必要なため、不安がある場合は薬を避けるかどうかだけでなく、具体的な塗り方や経過の確認方法を医師と相談しましょう。
Q3. アレルギー検査で原因が分かりますか?
アトピー性皮膚炎では、アレルギー検査だけで湿疹の原因を特定することはできません。特異的IgE抗体の陽性は、その物質が実際に症状を起こしていることと同じではないためです。症状が出る時期や接触・食事との関係を合わせて判断する必要があります。
Q4. 子どもも受診できますか?
子どもの湿疹やかゆみも相談できます。乳幼児ではほかの湿疹との区別も必要になります。年齢や皮膚の状態に合わせて薬を選び、塗る量や範囲を確認しながら、保護者の方が続けやすい治療計画を一緒に考えます。塗り方が分からない、続けにくいという事情もお伝えください。
Q5. どのようなときに受診するとよいですか?
かゆみで眠れない、湿疹が広がる、じゅくじゅくする、顔や目の周りが悪化する、市販薬で改善しない場合は受診してください。
皮膚科受診を考えている方へ
アトピー性皮膚炎や子どもの湿疹が続く場合は、症状の経過や使っている薬について皮膚科でご相談ください。
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能、免疫反応、乾燥、刺激などが関わる皮膚の病気です。治療の基本は、炎症を抑える薬物療法と、皮膚を守るスキンケアを組み合わせることです。
- ステロイド外用薬の副作用が心配なときは、使う部位と強さ・量・期間を具体的に確認しましょう
- 薬をやめるとすぐ悪化する場合は、塗る量や期間、維持療法を見直す必要があるかもしれません
- 治療選択肢は増えていますが、まずは現在の炎症の強さとこれまでの治療内容を確認します
- かゆみで眠れない、学校や仕事に影響している、子どもの湿疹が長引く場合は、一人で抱え込まずに相談してください
皮膚の症状は、つらさが周囲に伝わりにくいことがあります。かゆみ、見た目の変化、薬への不安、長く続く治療への疲れも含めて、診察で話していただいて大丈夫です。
当院での診療について
湘南皮膚科は、2027年3月の開院を予定しています。開院後は、湿疹の部位、かゆみの強さ、生活への影響、これまでの治療歴をうかがい、保険診療を中心に治療を提案します。外用薬、保湿、悪化因子の整理を基本に、症状や生活の背景に応じて方針を考えていきます。
外用治療だけでは十分に抑えられない場合は、光線療法、注射薬、JAK阻害薬なども適応に応じて検討します。JAK阻害薬は院外処方で対応し、重症例や専門的な評価が必要な場合は連携医療機関へ紹介いたします。
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まとめ
- アトピー性皮膚炎は、かゆい湿疹を繰り返す慢性炎症性疾患です
- 保湿だけでなく、炎症を適切に抑える治療が大切です
- 検査値だけで原因を決めるものではありません
- 感染や目の周りの悪化がある場合は早めの受診が必要です
- 薬の種類だけでなく、塗る量と期間を確認しましょう
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※この記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療の代わりになるものではありません。
文責
文責:皮膚科専門医 栗原佑一
所属:湘南皮膚科
資格:日本専門医機構認定 皮膚科専門医
作成日:2026年05月28日 最終更新日:2026年09月07日
参考文献・情報源
- 日本皮膚科学会・日本アレルギー学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」(PDF)
- 日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎における生物学的製剤の使用ガイダンス」(2023年版、PDF)
- 日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎におけるヤヌスキナーゼ(JAK)阻害内服薬の使用ガイダンス」(2022年版、PDF)
参照日:2026年9月7日(診断・検査・外用治療・スキンケアの説明)。生物学的製剤・JAK阻害薬の使用条件は改訂されるため、治療を検討する時点の添付文書等で確認します。
