専門治療ガイド
アトピー性皮膚炎の全身療法(注射薬・飲み薬)
この記事の薬剤情報は2026年7月27日時点のものです。対象年齢や条件は変わることがあるため、最新の情報は診察時にご確認ください。
監修:栗原佑一(皮膚科専門医)
作成日:2026年06月11日
最終更新日:2026年07月27日
―― 要点 ――
アトピー性皮膚炎の治療の基本は、保湿と外用薬です。しかし、適切な外用治療を続けても中等症から重症の症状が続く場合は、注射薬(生物学的製剤)や飲み薬(JAK阻害薬)による全身療法が選択肢になります。
2026年7月27日時点で、国内では注射薬4剤(デュピルマブ、ネモリズマブ、トラロキヌマブ、レブリキズマブ)、飲み薬のJAK阻害薬3剤(バリシチニブ、ウパダシチニブ、アブロシチニブ)などが使えます。デュピルマブは生後6か月から、バリシチニブは2歳から使えるなど、小児にも使える薬が増えてきています。
ただし、これらは希望すればすぐに使える薬ではありません。適切な外用治療を一定期間行っても十分に抑えられない中等症以上の方が対象で、薬剤ごとに国の定めた使用条件(適応の目安)があります。
どの薬が合うかは、適応条件を満たすかの評価に加えて、年齢、症状、かゆみの強さ、通院のしやすさ、費用、安全性を総合して決めます。
このページの目次
全身療法を検討するとき
- ステロイドなどの外用薬を適切に使っても、湿疹やかゆみが抑えられない
- かゆみで眠れない日が続いている
- 顔や手など生活に影響する部位の症状が続く
- 繰り返す悪化で学業や仕事に支障が出ている
- 広い範囲に強い炎症が続いている
全身療法は外用薬の代わりではなく、保湿・外用治療と組み合わせて使うことが基本です。
治療選択肢の全体像(2026年7月27日時点)
注射薬(生物学的製剤)
デュピルマブ(デュピクセント®)
標的:IL-4/IL-13
対象年齢の目安:生後6か月以上
特徴:最も使用経験が多い。結膜炎などに注意。自己注射が可能
ネモリズマブ(ミチーガ®)
標的:IL-31受容体
対象年齢の目安:6歳以上
特徴:かゆみの経路を直接抑えることが特徴
トラロキヌマブ(アドトラーザ®)
標的:IL-13
対象年齢の目安:成人
特徴:IL-13を選択的に抑える。自己注射が可能
レブリキズマブ(イブグリース®)
標的:IL-13
対象年齢の目安:12歳以上かつ体重40kg以上
特徴:IL-13を選択的に抑える。維持期は4週間隔の投与が可能
飲み薬(JAK阻害薬)
バリシチニブ(オルミエント®)
主な標的:JAK1/JAK2
対象年齢の目安:2歳以上
特徴:小児まで対象が広い。1日1回内服
ウパダシチニブ(リンヴォック®)
主な標的:JAK1
対象年齢の目安:12歳以上かつ体重30kg以上
特徴:かゆみへの効果発現が比較的速いとされる
アブロシチニブ(サイバインコ®)
主な標的:JAK1
対象年齢の目安:12歳以上
特徴:1日1回内服。用量調整の選択肢がある
従来からの飲み薬
シクロスポリン(短期間の使用が原則)、ステロイド内服(原則として短期間にとどめる)などがあります。
対象年齢や用量は添付文書の改訂で変わることがあります。
使うための条件(適応の目安)
注射薬・飲み薬のいずれも、「これまでの治療で効果不十分な場合」に使う薬で、薬剤ごとに国の最適使用推進ガイドラインなどで使用条件が定められています。2026年7月27日時点における、多くの薬の大まかな枠組みは次のとおりです。
- 適切な強さのステロイド外用薬(必要に応じてタクロリムス軟膏などを追加)による外用治療を、直近6か月以内に一定期間(4週間以上の連日外用など)きちんと行っても、十分に抑えられないこと
- 医師の評価で中等症以上であること。成人では、重症度スコア(IGA 3以上、EASI 16以上)や、病変が体表面積の10%以上といった基準が目安として用いられます
- 小児では、年齢・体重の条件に加えて、年齢に応じた重症度の基準が用いられます
- JAK阻害薬では、治療前の血液検査・感染症の確認に加えて、処方できる医療機関・医師の要件が定められています
ネモリズマブ(ミチーガ®)は、ほかの薬と条件の考え方が異なり、適応は「アトピー性皮膚炎に伴うかゆみ」です。適切な外用治療を4週間以上行い、抗ヒスタミン薬などを使える場合は2週間以上続けても強いかゆみが残る6歳以上の方について、EASI 10以上に加え、年齢ごとのかゆみの基準を満たすかを調べます。13歳以上ではNRS 5以上(またはVAS 50以上)かつ、かゆみスコア3以上、6歳以上13歳未満ではかゆみスコア3以上が目安です。
具体的な数値基準は薬剤と年齢によって異なり、ガイドラインの改訂で変わることがあります。「自分が対象になるか」は、皮膚の状態とこれまでの治療内容を診たうえで判断しますので、診察時にご相談ください。
外用治療が十分に行われていない場合は、まず外用治療の見直し(薬の強さ、塗る量、塗る範囲)から始めることが、結果的に近道になることも多くあります。
注射薬と飲み薬の違い
注射薬(生物学的製剤)は、炎症やかゆみに関わる特定の物質だけを狙って抑える薬です。標的が絞られているぶん、感染症などへの影響が比較的少ないとされますが、注射であること、結膜炎や注射部位反応などの副作用に注意が必要です。
飲み薬(JAK阻害薬)は、炎症の信号を細胞の中でブロックする薬です。内服で済み、かゆみへの効果が早く出やすい一方、帯状疱疹などの感染症、血液検査値の変化に注意が必要で、定期的な採血が必要です。喫煙歴、年齢、血栓症の既往などによってはリスクの確認がより重要になります。
治療前・治療中に必要な検査
- 治療前:血液検査、B型肝炎・結核などの感染症の確認(薬剤により異なります)
- 治療中:定期的な血液検査(特にJAK阻害薬)、症状と副作用のチェック
- ワクチン:JAK阻害薬では帯状疱疹ワクチンの接種を治療前に検討することがあります。生ワクチンの接種時期には注意が必要です
妊娠・授乳中、妊娠を希望される方は、使える薬が限られるため必ずお伝えください。
費用について
全身療法は保険診療ですが、薬剤費が高額になるため、自己負担も外用治療より大きくなります。高額療養費制度や、お勤め先の健康保険組合の付加給付などで、月々の自己負担額を一定以下に抑えられる場合があります。年齢や所得によって仕組みが異なるため、診察時にご相談ください。小児では自治体の医療費助成の対象になる場合があります。
よくある質問
Q1. 希望すればすぐに使えますか?
すぐには使えないことが多いです。各薬剤に「適切な外用治療を一定期間行っても効果不十分な中等症以上」という条件があり、まず皮膚の状態とこれまでの治療内容を診て判断します。外用治療がまだ十分でない場合は、その見直しから始めます。
Q2. 注射と飲み薬はどちらがよいですか?
どちらが優れているかは一概に言えません。年齢、症状、かゆみの強さ、通院間隔、注射への抵抗感、検査の頻度、費用などを総合して、一人ひとりに合う選択肢を一緒に考えます。
Q3. 一度始めたらずっと続けるのですか?
症状が安定した後の減量・中止・間隔の調整は、薬剤や経過によって異なります。やめると再燃する場合もあるため、状態を見ながら相談して決めます。
Q4. 子どもでも使えますか?
デュピルマブは生後6か月以上、バリシチニブは2歳以上、ネモリズマブは6歳以上など、小児で使える薬が増えています。年齢、体重、症状に応じて検討します。
Q5. 副作用が心配です。
それぞれの薬に特有の注意点があります(結膜炎、帯状疱疹、検査値の変化など)。治療前の確認と定期的なチェックを行い、副作用や検査値の変化があれば治療の進め方を見直します。
Q6. 効果はどのくらいで分かりますか?
薬剤や症状によりますが、数週間から数か月かけて評価します。かゆみが先に軽くなり、皮疹が後から改善していくことが多いです。
当院での診療について
湘南皮膚科では、外用治療を見直したうえで、必要な方に全身療法を提案します。生物学的製剤は適応を見極めて導入し、JAK阻害薬は院外処方で対応します。
治療前と治療中に必要な採血を行い、薬剤ごとの対象年齢や副作用、自己注射の方法、費用の見通しを診察時にお伝えします。導入時に入院や専門的な評価が必要な場合は、連携医療機関と協力して進めます。
これまで使った薬や治療経過が分かるものがあると、治療選択肢を整理しやすくなります。
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まとめ
- 外用治療で抑えられない中等症以上のアトピー性皮膚炎には全身療法の選択肢があります
- 薬剤ごとに使用条件があり、外用治療歴と重症度(IGA・EASI・病変面積など)の評価が必要です。ネモリズマブ(ミチーガ®)では、これらに加えて年齢別のかゆみの基準も評価のポイントになります(基準は今後変わる可能性があります)
- 注射薬4剤・飲み薬3剤など、2026年7月27日時点で多くの選択肢があります
- 小児で使える薬も増えています(生後6か月〜、2歳〜など)
- 薬剤ごとに必要な検査と注意点が異なります
- 高額療養費制度などで費用負担を抑えられる場合があります
※この記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療の代わりになるものではありません。
監修者情報
監修:栗原佑一
所属:湘南皮膚科
資格:日本専門医機構認定 皮膚科専門医
作成日:2026年06月11日 最終更新日:2026年07月27日
