皮膚科疾患ガイド
掌蹠膿疱症
掌蹠膿疱症は、手のひらと足の裏に膿をもつ小さなぶつぶつ(膿疱)を繰り返す慢性の皮膚疾患です。膿は細菌によるものではなく、人にうつる病気ではありません。
監修:栗原佑一(皮膚科専門医)
作成日:2026年06月11日
最終更新日:2026年07月27日
―― 要点 ――
掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に無菌性の膿疱が周期的に出ては治まることを繰り返す病気です。赤み、皮むけ、ひび割れを伴い、痛みで歩きにくくなることもあります。
喫煙との関連が強く、扁桃炎や歯周炎などの病巣感染、歯科金属が関係する場合もあります。胸の中央や鎖骨周囲の痛みを伴う場合は、骨や関節の炎症(掌蹠膿疱症性骨関節炎)の可能性があります。
治療は外用薬が基本で、紫外線療法、内服薬、生物学的製剤などを症状に応じて組み合わせます。
このページの目次
掌蹠膿疱症とは?
手のひらと足の裏に、黄色っぽい膿疱と赤み、かさつきが繰り返し出る病気です。膿疱の中身は白血球で、細菌は含まれていません。
「水虫が治らない」と思って受診したら掌蹠膿疱症だった、ということもあります。中年以降の方に多く、喫煙者に多いことが知られています。
よくある症状
見た目の変化
小さな水ぶくれや黄色い膿疱が多数でき、やがて茶色いかさぶたや皮むけになります。赤み、ひび割れ、爪の変形を伴うこともあります。
感じ方の変化
かゆみ、ひりつき、ひび割れの痛みがあります。足の裏の症状で歩行がつらくなることもあります。
出やすい部位
手のひら、足の裏が中心です。すねや膝などに皮疹が出ることもあります。
悪化しやすいタイミング
喫煙、扁桃炎などの感染、ストレス、季節の変化などが関わることがあります。周期的に良くなったり悪くなったりを繰り返すことが特徴です。
このような症状は皮膚科にご相談ください
- 手のひらや足の裏に膿をもつぶつぶつを繰り返す
- 皮むけやひび割れが長く続いている
- 水虫の薬を使ってもよくならない
- タバコを吸っている
- のどの炎症や歯の治療後に悪化したことがある
- 胸の中央や鎖骨のあたりが痛むことがある
早めの受診をおすすめする症状
- 胸の中央、鎖骨、背中などの痛みが続く
- 痛みで歩行や仕事に支障が出ている
- 膿疱やひび割れが急に悪化した
- 発熱を伴う
似ている病気・見分けるポイント
手のひら・足の裏の膿疱や皮むけは、水虫、汗疱、乾癬などでも起こります。自己判断で市販薬を続ける前に、検査で確認することが大切です。
水虫(足白癬・手白癬)
似ている点:皮むけや小さな水ぶくれが似ます
見分けるポイント:顕微鏡検査で白癬菌の有無を調べます
受診の目安:市販薬で改善しない場合
汗疱・異汗性湿疹
似ている点:手足の小さな水ぶくれが似ます
見分けるポイント:膿疱か水疱か、周期性、経過の違いがポイントです
受診の目安:繰り返す、膿をもつ場合
乾癬(膿疱性乾癬を含む)
似ている点:赤みや膿疱、皮むけが似ます
見分けるポイント:他の部位の皮疹、爪、関節症状を見て、必要なら生検で判断します
受診の目安:全身に膿疱や発熱がある場合は早めに受診
接触皮膚炎
似ている点:手の赤みや皮むけが似ます
見分けるポイント:仕事や生活で触れる物との関係が手がかりになります
受診の目安:特定の作業で悪化する場合
原因と悪化要因
体質・免疫などの内的要因
膿疱ができる仕組みには免疫の働きが関係すると考えられています。金属アレルギーが関与する場合もあり、必要に応じてパッチテストを行うことがあります。
生活習慣・環境などの外的要因
喫煙は発症・悪化との関連が強く、禁煙は治療の重要な柱です。扁桃炎、副鼻腔炎、歯周炎、歯科金属などの病巣感染が悪化に関わる場合があり、耳鼻咽喉科や歯科との連携が必要になることがあります。
診断で大切なポイント
皮膚症状だけでなく、骨・関節症状(胸鎖関節や鎖骨周囲の痛み)の有無を確認します。掌蹠膿疱症性骨関節炎を合併する場合は、治療方針が変わることがあります。
皮膚科で行う検査・診断
多くは特徴的な見た目と経過で診断します。水虫との区別のために顕微鏡検査(真菌鏡検)を行うことがあります。診断が難しい場合は皮膚生検を検討します。
金属アレルギーが疑われる場合はパッチテスト、骨関節症状がある場合は血液検査や画像検査、専門科との連携を検討します。
皮膚科で行う主な治療
掌蹠膿疱症では、手のひら・足の裏の炎症を抑え、ひび割れや痛みによる生活への支障を減らすことが治療の目標です。外用薬を基本に、範囲や反応に応じて光線療法や全身治療を組み合わせ、喫煙、感染病巣、関節症状などの背景も整理していきます。
外用薬
ステロイド外用薬、活性型ビタミンD3外用薬を中心に使います。角質が厚い部位では塗り方や薬の組み合わせを工夫します。
紫外線療法
外用薬で不十分な場合は、エキシマライトやナローバンドUVBなどの紫外線療法が選択肢になります。週1回程度から通院し、反応を見ながら続けます。
内服薬・生物学的製剤
ビタミンA誘導体(エトレチナート)などの内服薬が使われることがあります。難治例では、グセルクマブやリサンキズマブなどの生物学的製剤が掌蹠膿疱症への適応をもち、選択肢になります。適応、費用、感染症などの確認が必要です。
生活・病巣への対応
禁煙、扁桃炎や歯周炎などの治療、歯科金属の評価を、症状や経過に応じて組み合わせます。
自宅でできるセルフケア
セルフケアでは、厚くなった皮膚のひび割れと摩擦を減らし、悪化のきっかけを記録します。膿疱は感染による膿とは限りませんが、自分でつぶすと傷や二次感染につながります。
- 禁煙する(最も重要な対策の一つです)
- 手足を強くこすらない、無理に皮をむかない
- ひび割れには保湿や保護を行う
- 合わない靴や長時間の摩擦を避ける
- のどや歯の治療を放置しない
やってはいけないこと・注意点
- 水虫と自己判断して市販薬を長く続ける
- 膿疱をつぶす
- 喫煙を続けながら薬だけで治そうとする
- 胸や鎖骨の痛みを放置する
よくある質問
Q1. 掌蹠膿疱症はうつりますか?
うつりません。膿疱の中身は無菌で、感染症ではありません。
Q2. 治るまでどのくらいかかりますか?
経過には個人差がありますが、数年単位で良くなったり悪くなったりを繰り返したのち、落ち着いていくことが多いとされています。悪化要因への対策と治療を組み合わせて、症状を抑えることを目指します。
Q3. タバコをやめると本当によくなりますか?
喫煙は掌蹠膿疱症との関連が強く、禁煙で改善する方がいます。禁煙だけですぐに治るとは限りませんが、治療効果を高めるために重要です。
Q4. 扁桃腺や歯の治療が必要と言われました。なぜですか?
扁桃炎や歯周炎などの慢性的な炎症(病巣感染)が、皮膚症状の悪化に関わる場合があるためです。耳鼻咽喉科や歯科と連携して評価します。
Q5. 胸の痛みも関係ありますか?
掌蹠膿疱症では、胸鎖関節など前胸部の骨・関節に炎症を起こすことがあります。痛みが続く場合は診察時にお伝えください。
皮膚科受診を考えている方へ
手足の膿疱や皮むけは、水虫や湿疹と見分けにくいことがあります。診察では、真菌検査の必要性、関節や胸の痛み、扁桃炎・歯科感染、喫煙などの背景を確認し、外用治療だけでよいか、ほかの治療も必要かを判断します。
歩行や手作業に支障がある、胸や関節が痛む、膿疱が急に広がる場合はご相談ください。
当院での診療について
湘南皮膚科では、手足の状態、喫煙の有無、のどや歯の症状、骨・関節症状をうかがい、保険診療を中心に治療を提案します。必要に応じて真菌鏡検、パッチテスト、皮膚生検も行います。
エキシマライトと全身ナローバンドUVBによる紫外線療法や生物学的製剤も、適応と安全性を見ながら検討していきます。骨・関節症状が強い場合や専門的な評価が必要な場合は、連携医療機関へ紹介いたします。
手足の症状に加えて関節の痛みがある場合も、診察時にお伝えください。
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診療時間・アクセス
まとめ
- 掌蹠膿疱症は手のひら・足の裏に無菌性の膿疱を繰り返す病気です
- 水虫と似るため、検査での確認が大切です
- 喫煙・扁桃炎・歯周炎などの悪化要因への対策が治療の柱です
- 外用薬、紫外線療法、生物学的製剤などの選択肢があります
- 胸や鎖骨の痛みを伴う場合は必ず伝えてください
※この記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療の代わりになるものではありません。
監修者情報
監修:栗原佑一
所属:湘南皮膚科
資格:日本専門医機構認定 皮膚科専門医
作成日:2026年06月11日 最終更新日:2026年07月27日
